ビットコインは、たくさんの計算機に計算を競わせて動いています。計算に勝つとビットコインがもらえるので、計算機を何万台も並べて、電気を大量に使う会社があります。こうした会社を、採掘業者と呼びます。

2025年から、採掘業者がAIの会社と大きな契約を結んだ、というニュースが続きました。AIの計算機を置く建物と、そこへ引く電気を、多くは10年以上の長さで貸す契約です。テキサスのある採掘業者は2026年8月、自分の敷地の一部をAIの研究所に20年貸す契約を発表しました。会社の見込みでは、20年で約91億ドル(ドル建て)の収入になる契約です。

ビットコインの値動きを怖いと感じている人にも、関係のある話です。ビットコインを動かしているのは、この会社たちの計算機だからです。その持ち主が、土地と電気をほかの商売に回し始めています。

では、採掘業者はもう、ビットコインを掘る会社からAIの大家に変わったのでしょうか。

変わったのは、一部の会社だけでした。アメリカに上場する採掘業者7社の2026年4〜6月の決算を見ると、売上の半分以上がAI向けだったのは3社です。残りの4社は、AI向けの売上が2割に届かず、売上の半分以上をまだ採掘で得ていました。91億ドルの契約を発表した会社も、AIの計算機を置き始めるのは2027年12月の見込みです。2026年は、まだ採掘を続けています。

ただし、いまの売上で測るのは早すぎるかもしれません。契約の収入は、何年も先から入ってくるからです。AI向けの売上が、3か月で2割から5割に増えた会社もありました。この見方は、記事の終わりの「反対側から見ると」で、数を見ながら確かめます。

この記事は、どの会社の株が上がるかを予想しません。確かめるのは、発表された契約と、決算に表れた売上の差だけです。

採掘業者は、土地と電気をAIの会社に長く貸す契約を結び始めた

採掘業者が貸しているのは、計算機を置く建物と、そこへ引いた電気です。AIの会社は、自分の計算機をその建物に運び込み、毎月の賃料を払います。

AIの計算機も、ビットコインの計算機と同じように、たくさんの電気を使います。新しい建物を建てても、電気が足りなければ計算機は動きません。7社のうちの1社、Core Scientificは決算の書類にこう書いています。十分な電気を得られるかどうかが、貸し出しの事業を伸ばすうえで最も大きな制約の1つだ、と。採掘業者は、大きな電気をすでに引いた土地を持っていました。

2026年10月29日 取得7社のうち6社が、1件で数十億ドルの契約を発表していた

各社が発表したAI向けの契約のうち、金額のいちばん大きい1件です。金額は、会社が見込む基本の期間の総額(ドル建て)です。右の年数は、その契約の長さです。

Core Scientific 102億ドル・12年 TeraWulf 190億ドル・20年 IREN 97億ドル・5年 Riot 91億ドル・20年 MARA AIとの契約の発表なし Cipher 55億ドル・15年 CleanSpark 66億ドル・20年

受け取った額ではなく、会社の見込みです。延長の権利を使った分は入れていません。Core Scientificが2026年7月に2社と結んだ契約(会社は「潜在」140億ドルと書く)と、TeraWulfが合弁で結び、のちに持ち分を売った契約は入れていません。IRENの契約は、建物を貸すのではなく、自分で持つAIの計算機を貸す形で、年数は平均です。MARAは2026年6月末までに、AIの会社に貸す契約を発表していません。

出典:各社が米国の証券の役所(SEC)に出した書類と発表から筆者がまとめた。金額は会社の見込み・元データ

7社のうち6社が、AIの会社と1件で数十億ドルの契約を発表していました。期間は10年から20年のものが多く、相手にはAmazonやMicrosoftのような大きな会社も入っています。

貸し方は、会社によって3つに分かれます。

1つ目は、ビットコインを掘っていた敷地を、そのままAIの会社に貸す形です。テキサスのRiotや、Amazonに貸すCipherがこの形です。Cipherが貸す敷地では、2025年6月から採掘をしていました。

2つ目は、新しく土地を買い、そこに建物を建てて貸す形です。CleanSparkは、採掘をしている敷地の隣に土地を買い、そこを20年貸す契約を結びました。

3つ目は、建物だけでなく、AIの計算機も自分で買って貸す形です。IRENは、Microsoftとこの形の契約を結びました。

どの形でも、契約を結んだ日と、賃料が入り始める日のあいだには、ずれがあります。CleanSparkの契約は、6月末の時点でまだ売上を生んでいませんでした。Riotの91億ドルの契約も、計算機が入るのは2027年12月からです。では、いまの売上はどうなっているのでしょうか。

売上の半分以上をAIの会社への貸し出しで得ている会社は、まだ一部だった

7社の2026年4〜6月の売上を、決算の書類に書かれた区分で分けました。AI向けとしたのは、会社がAIの会社への貸し出しや、AIの計算の売上として書いた分です。採掘としたのは、ビットコインを掘って得た売上です。

2026年10月30日 取得AI向けの売上が半分を超えたのは、7社中3社だった

2026年4〜6月の売上を、AI向け(青・左から)と採掘(灰色・右から)に分けました。あいだの濃い灰色は、どちらでもない売上です。点線は売上の半分の位置です。

← AI向け 半分 採掘 → Core Scientific AI 83% 採掘 17% TeraWulf AI 71% 採掘 29% IREN AI 51% 採掘 49% Riot AI 13% 採掘 65% MARA AI 0% 採掘 97% Cipher AI 0% 採掘 100% CleanSpark AI 0% 採掘 100%

AI向けと採掘の区分は、会社ごとの書き方に従いました。RiotのAI向けの約8割は、借り手のための内装を立て替えた分です。IRENのAI向けは、自分で持つ計算機を貸した売上です。Core Scientificの採掘には、ほかの会社の採掘機を預かる売上を含みます。MARAのどちらでもない売上(2.6%)は、ソフトウェアなどの売上で、AI向けの分を書類から分けられません。IRENとCleanSparkは会計の年の区切りが違うので、暦の同じ3か月の数を使いました。

出典:各社の2026年4〜6月の決算の書類(SEC)とIRENの決算の発表から筆者が計算・元データ

AI向けの売上が半分を超えたのは3社でした。AI向けの割合は、Core Scientificの83%、TeraWulfの71%、IRENの51%です。残りの4社では、売上の半分以上が採掘でした。MARAは売上の97%が採掘で、CleanSparkとCipherは売上のすべてが採掘でした。Riotは採掘が65%で、AI向けは13%でした。

7社の中でも、AIに移った度合いは大きく分かれています。「採掘業者がAIに乗り換えた」と言えるのは、7社のうち3社までです。

IRENの売上は、AI向け51%、採掘49%で、ほぼ半分ずつでした。3か月前の1〜3月には、AI向けは23%でした。3か月で半分の線を越えたことになります。

いちばんAIに寄っていたのは、Core Scientificです。この会社は前の年に、AIの会社に丸ごと買われかけました。買おうとしたのは、AIの計算機を貸すCoreWeaveという会社です。2025年7月、CoreWeaveはCore Scientificを約90億ドルで買うと発表しました。代金は、全部をCoreWeaveの株で払う形でした。

2025年10月30日の株主総会で、投じられた票の8割以上がこの買収に反対し、話は流れました。反対した大きな株主は、値段が安すぎることと、全部を株で払う形を理由に挙げていました。

その9か月後の2026年7月、Core Scientificは別の2社と、15年の契約を結びました。売上の中身も、この1年で入れ替わっています。1年前の4〜6月は、AI向けは売上の13%でした。2026年の4〜6月は83%です。

大きな契約を発表した会社も、売上の大半はまだ採掘から得ていた

導入部で書いた、20年で約91億ドルの契約を発表したのは、テキサスのRiotです。Rockdaleという町にある、ビットコインを掘ってきた敷地の一部を、名前を伏せたAIの研究所に貸します。

2026年10月30日 取得Riotの4〜6月の売上は、約3分の2がまだ採掘だった

Riotの2026年4〜6月の売上を、決算の書類の区分ごとに並べました。青はAI向けで、薄い青はその中の内装の立て替え分です。

ビットコインの採掘 1億1,370万ドル・65% 電気設備の製造 3,730万ドル・21% AI向けの貸し出し 2,320万ドル・13% うち内装の立て替え 1,830万ドル

電気設備の製造は、Riotが持つ、配電の装置などをつくる事業の売上です。AI向けの貸し出しの相手は、半導体の会社のAMDです。91億ドルの契約の相手からの売上は、まだありません。

出典:Riotの2026年4〜6月の決算の書類(SEC)から筆者が計算・元データ

Riotの4〜6月の売上は、約1億7,420万ドルでした。そのうち約1億1,370万ドル、およそ3分の2が採掘の売上です。AI向けの売上は約2,320万ドルで、売上の13%でした。

このAI向けの売上は、91億ドルの契約とは別の、半導体の会社AMDへの貸し出しの分です。しかも約8割の1,830万ドルは、AMDのために内装の工事や機器をそろえ、その費用に上乗せをつけて払ってもらう分でした。毎月の賃料のような売上は、AI向けの2割ほどです。

91億ドルの契約で、AIの計算機が入り始めるのは2027年12月の見込みです。最初に約半分が入り、残りは2028年6月に入る予定です。それまで、91億ドルの契約から入る売上はありません。

その間も、Riotは採掘で稼ぎ続けています。テキサスでは、夏の暑い日などに電気が足りなくなると、電気の値段は跳ね上がります。そうした時、Riotは計算機を止めます。買う約束をしていた電気を売り戻したり、電気を使わないことへの対価を受け取ったりするためです。

Riotは2026年1〜6月に、こうして計算機を止めた分として約3,110万ドルを得ました。このお金は、決算の書類で売上の行には入らず、電気代から差し引く形で書かれています。

大きな契約を発表した会社も、いまの稼ぎを支えているのは採掘でした。91億ドルの契約が売上に表れるのは、早くても2027年12月からです。

反対側から見ると

いまの売上で測るのは早すぎる、という見方には、数の上でも理由があります。IRENのAI向けは、3か月で23%から51%になりました。Core Scientificは、1年で13%から83%になりました。Cipherは、Amazonに貸す敷地の最初の引き渡しを、2026年7月末に前倒ししました。この記事の数は、2026年4〜6月という1つの時点の写真です。1年後には、AI向けが半分を超える会社の数が変わっているかもしれません。

数え方を変えると、答えも変わります。IRENの1年分(2025年7月〜2026年6月)で数えると、AI向けは18%でした。この数え方なら、半分を超えたのは2社です。この記事は、7社とも同じ2026年4〜6月の3か月で数えました。また、何をAI向けと呼ぶかは会社ごとに少しずつ違います。RiotのAI向けの約8割は内装の立て替えで、IRENのAI向けは自分で持つ計算機を貸した売上です。

7社は、アメリカに上場する採掘業者のすべてではありません。Hut 8やGalaxyのように、AIの会社と大きな契約を結んだのに、この記事では数えていない会社もあります。

「AIに足りないのは電気で、採掘業者はそれを持っている」という見方は、英語でも日本語でも、すでに広く書かれています。TeraWulfも、投資家向けの資料に「電気が制約で、それを握っているのは我々だ」という意味の言葉を載せています。この記事が確かめたのは、その見方が売上にどこまで表れたかだけです。

ただ、新しく土地を買って貸す会社もありました。採掘業者が売れたのは、すでに引いた電気そのものより、電気を早く引く段取りの覚えだったのかもしれません。これは推測で、この記事では確かめていません。

最後に、ビットコインを動かす計算の量は減ったのでしょうか。ネットワーク全体の計算の量は、2025年10月の山から2026年7月までに約17%減りました。2026年10月には、山の95%ほどまで戻っています。この量は、取引の記録がまとめられる速さから推し量った値です。戻った分を、どの会社の計算機が担ったのかは、調べた範囲では分かりませんでした。

この記事が覆るとき

これから出る決算で、7社のうち4社以上の売上の半分以上がAI向けになったら、この記事の答えを書き直します。最初に確かめるのは、2026年7〜9月の3か月の決算です。

数え方は、この記事と同じです。7社の決算の書類で、AI向けの売上を、その3か月の売上の合計で割ります。書き直すときは、この記事のはじめに、書き直した日と理由を足します。元データと計算の定義は、図の「元データ」から取れます。

AIとの大きな契約のニュースを見たら、それが発表の話なのか、売上の話なのかを確かめてみてください。

2026年10月30日に直したこと: 図1のTeraWulfの欄を、Fluidstackとの37億ドル・10年の契約から、Anthropicとの約190億ドル・20年の契約に直しました。TeraWulfの決算の発表に金額が書かれていたのを、最初に図を作ったときに見落としていました。記事の答えは変わりません。