Skyは、旧MakerDAOが進めるEndgame計画から生まれた新ブランドで、ドルを「預けると自動で利息がつく置き場所」として再設計することをめざしています。利回り付きステーブルコインUSDSとガバナンストークンSKYを軸に、RWA(現実世界資産)で得た利息をオンチェーンへ流し込み、暗号資産に詳しくないユーザーでも使いこなせる“貯蓄口座に近い体験”をつくろうとしているのが特徴です。
背景には、米国債利回りの高止まりやRWA市場の拡大といった追い風があります。従来のステーブルコインが「価値の移動」を担ってきた一方で、Skyは「価値の保管と増加」に重心を置き、オンチェーン上のドルの役割をもう一段引き上げようとしているプロトコルです。
この記事では、Skyの構造、主要プロダクト、トークン設計、競合環境、そして長期で向き合うべきリスクを整理しながら、投資判断に必要な“見立ての軸”をわかりやすく解説します。まずは、Skyが何を提供し、どんな未来を狙うプロジェクトなのかを土台から順番に見ていきます。
- 旧MakerDAOの実績とTVLを受け継ぎ、USDSとSky Savingsで“利回り付きドル”の使い道を広げている。
- RWAポートフォリオからの利息をSky Savings Rateとして分配し、USDS保有者に年率数%の安定利回りを届けている。
- USDSの凍結機能やRWA規制への対応など、分散性とコンプライアンスのバランスが投資判断の重要ポイントになる。
定義と価値提案:このプロジェクトは何者か
MakerDAOからSky Protocolへ:ブランドとミッションの更新
MakerDAOは、担保を預けてDAIを発行するCDP方式(担保を入れて借りる仕組み)の先駆けとして、長くDeFiを支えてきました。このMakerDAOがEndgame計画の一環としてブランドをSkyへ切り替え、USDSとSKYを中核に据えたのが現在のSky Protocolです。
DAIとMKRは一定期間並行して残り、時間をかけてUSDSとSKYへ重心が移る設計です。移行レートや既存ポジションの扱いは、ホワイトペーパーやガバナンス提案で細かく定義されており、段階ごとにロードマップが示されています。
Skyがめざすのは、ドルを預けると自然に利回りがつくシンプルな体験です。仕組みの裏側はDeFiとRWA(現実世界資産)が支え、フロントではSky.moneyのUIが銀行口座のようなわかりやすさを担います。複雑な仕組みを“日常的な置き場所”に変えることがミッションといえます。
利回り付きドルとRWAで狙うポジション
USDSは1ドルにソフトペッグしたステーブルコインで、担保にはETHなどの暗号資産に加えて米国債などのRWAも含まれます。これにより、従来のDAIと同様にオンチェーンでの手数料収益を得つつ、オフチェーン金利も取り込みやすくなっています。
RWAポートフォリオはすでに数十億ドル規模に達し、ここから生まれる利息とプロトコル収益がSky全体の基盤になっています。格付け会社S&PがSky関連RWAにB-評価を付けた例もあり、「DeFiだが伝統金融に近いリスクレンジ」として見られている点も特徴です。
投資家目線では、短期債ファンドに近い利回りをオンチェーンで利用できるインフラをめざしていると言えます。キャピタルゲインよりも安定的なインカム需要に応えるポジションで、資金の“置き場所”としての性質が強くなっています。
主要プロダクト:収益と需要の入り口
USDS:RWA担保の新ステーブルコイン
USDSはSky Protocolが発行するドル連動ステーブルコインです。担保を差し入れてミントし、償還時に返却すれば担保を取り戻す仕組みで、担保にはETHなどの暗号資産に加えて米国債などのRWA(現実世界資産)も含まれます。
Skyが前面に押し出しているのは「利回り付きドル」という体験です。USDSを保有したりステーキングしたりする導線が用意されており、ユーザーは預けるだけで利回りを受け取れます。チェーン間ブリッジや外部DeFiでの利用も少しずつ広がっています。
一方で、USDSには将来的に凍結機能を有効化し得るコードが含まれており、規制対応と分散性のバランスは議論が続いています。この論点はSky全体のリスク評価にも関わる重要ポイントです。
Sky Savings Rate:利回りをシンプルに届ける窓口
Sky Savings Rate(SSR)は、USDSやDAIを預けるだけで利回りを得られる“貯蓄モジュール”です。専用インターフェースから預け入れると、RWAポートフォリオの利息や貸出手数料の一部が自動で還元されます。
2025年時点の利回りはおおむね年率4〜5%で、短期国債やマネーマーケットファンドに近い水準です。SSRに預けられたTVLは数十億ドル規模に成長しており、Skyにとって最も大きい資金流入ポイントになっています。
一部設計では、SSR預け入れ分をトークン化したsUSDSを発行し、他プロトコルで利用したり追加インセンティブを受け取ったりできます。「貯蓄しながらDeFiも使いたい」層にとって扱いやすい導線です。
Sky Starsと周辺アプリ:エコシステム拡大の仕掛け
Sky Starsは、USDSや関連プロダクトの利用量に応じてポイントやトークンを付与するロイヤリティプログラムです。クレジットカードのポイントに近い感覚で、長く使うほど報酬が蓄積されます。
その周辺にはSpark Lendなどのレンディングアプリや、他チェーンのDeFi連携が広がっています。USDSを担保に借り入れを行ったり、流動性プールで追加利回りを狙う用途も増えつつあります。
投資家にとっては、これらのアプリやインセンティブが「USDS残高をどこまで押し上げるか」の鍵になります。ただし、仕組みが複雑になりすぎるとA0ユーザーが離れやすく、シンプルさとの両立が今後の課題です。
仕組みの要点:資産が逃げにくい構造か
CDP+マルチコラテラルとRWAポートフォリオ
Skyの基盤は、旧MakerDAOと同じCDP(担保を預けてステーブルを発行する方式)です。ETHやLST、RWAトークンなどを担保に入れ、安全率を超えた範囲でUSDSを発行します。
担保は複数アセットで構成され、清算比率や手数料率などのパラメータは細かく分かれています。どの資産を受け入れ、どの程度の利率を付与するかは、SKYのガバナンス投票で調整されます。
RWAポートフォリオの裏側は米国債などの伝統金融資産が中心で、運用主体や方針が公開されています。オンチェーンの仕組みだけでなく、オフチェーンの管理体制もSky全体の安定性に直結します。
清算・ペグ維持・セーフティモジュール
USDSのペグは、過剰担保と清算メカニズムによって維持されます。担保価値が下落し安全ラインを割ると、自動的に担保売却が行われ、発行済みUSDSの価値を守ります。
清算オークションやプロトコル側のバッファ資金を組み合わせることで、市場が不安定な場面でもペグが崩れにくい設計です。MakerDAOがDAI時代に複数のショックを経験してきたことで、パラメータやオークション設計は段階的に改善されてきました。
一部モジュールでは、特定ステーブルコインとの交換を一定価格で受ける仕組みも検討されています。下値を支えやすい一方、集中リスクや依存度の高さには注意が必要です。
分散性とガバナンス:Endgame設計の論点
SKYはガバナンストークンで、担保の種類や上限、SSR利率、RWA運用方針などの主要パラメータがSKYホルダーの投票で決まります。
Endgame計画では、将来的にサブDAOのような形でガバナンスをより分散させる構想も提示されています。ただし、RWAの管理や凍結機能といった中央的判断を伴う領域は、完全な分散化が難しい側面もあります。
形式上はDAOであっても、実質的にどこまで分散しているのか、大口ホルダーへの偏りはないかなどは継続的なチェックが必要です。Skyは分散性と規制対応の間でバランスを取る設計が求められるプロジェクトです。
トークンの使われ方:価値が循環する設計か
SKY:ガバナンスと価値捕捉の軸
SKYは旧MKRの後継となるガバナンストークンで、MKRからSKYへの移行レートは固定です。既存ホルダーは定められた期間内で順次移行できます。
SKYホルダーは、手数料の使途、RWA配分、SSRの利率設定などに投票し、将来の収益構造に直接影響します。余剰利益の買い戻しやバーンが導入されれば、トークン価値への伝達経路はより強くなります。
現時点での価値捕捉は「期待」と「ガバナンス権」が中心です。どれだけの収益がSKYに還元されるか、いつ明確になるかは投資判断で外せない部分です。
出典: [5]
USDS:利回り付きステーブルとしての需要源
USDSの主用途は、SSRを通じて“利回り付きドル”として使うことです。ミントしたUSDSや取引所で購入したUSDSをSSRや他のDeFiに預けることで、年率数%の利回りを得られます。
Skyは、USDS発行時の手数料やRWAポートフォリオからの利息の一部を収益として受け取り、残りをユーザーへ還元します。この配分がプロトコルの魅力度とトークン価値の伝達率を左右します。
USDSが広く使われるほどSSRのTVLが増え、RWAポートフォリオも拡大します。収益の絶対額が増えることで、Sky全体の経済圏が太くなる仕組みです。
トークン価値への伝達率の視点
Skyを評価する際は、「プロトコル収益」と「SKYホルダーへの価値伝達」を分けて考えると構造が見えやすくなります。RWA利息や貸出手数料がどれだけ生まれ、そのうちどれがバッファやユーザー還元に回るのかを階層的に見るイメージです。
SSR利回りが高いほどユーザーは魅力を感じますが、その分SKYへの還元は相対的に小さくなります。反対に、余剰利益を買い戻しやバーンに多く回せば、トークン価値への伝達率は高まりやすくなります。
最終的には、USDS残高、RWA規模、SKYの供給量、還元ポリシーの組み合わせで、1SKYあたりの経済的な“重さ”が決まります。これらはガバナンスで変わり得るため、継続的なフォローが欠かせません。
競合の最小比較:他と比べた強みと物足りなさ
RWA×ステーブル市場での立ち位置
Skyは「RWAを収益源にした利回り付きステーブル」という領域で、いくつかの競合と重なります。Aaveのような汎用レンディングや、Ondo・Ethenaのような利回り重視のステーブルと比べると、Skyの強みと課題が見えやすくなります。
以下は主要プロジェクトを“ひと言特徴”で整理した最小比較です。
Sky:RWA利息を源泉にした“利回り付きドル”と貯蓄口座の体験を重視
Aave:マルチチェーンで使える汎用レンディング基盤として安定拡大
Ondo/Ethena:RWAやデリバティブを活用し、高利回りステーブルを前面に急拡大
Skyは「銀行の貯蓄口座に近い体験」を狙う一方、Aaveのような汎用性や、Ondo・Ethenaほどの積極的な利回りは提供しません。堅さと使いやすさを優先したポジションに寄っています。
投資家の見方:今どこまで進み何を見ていくか
採用スナップ
Skyを投資家の視点で追うときは、「USDSの流通量」「SSRのTVL」「RWAポートフォリオの規模」「外部DeFiでの対応状況」の4点を押さえると全体像がつかみやすくなります。これらはSky.moneyやデータプロバイダのダッシュボードで確認できます。
USDSの貯蓄利用:Sky Savings(ETH/L2)
レンディング連携:Spark Lend ほか(ETH/L2)
RWA運用:トレジャリー運用・RWA発行主体(ETHほか)
現状の採用は「利回り付きドル」としての貯蓄用途が中心で、決済やゲームなどのユースケースはまだ二次的です。
評価スコア
RWA規模やSSR利用は強みですが、RWA依存と分散性のバランスは引き続き注視点として残ります。
| 項目 | スコア |
|---|---|
| 採用と稼働 | 4/5 |
| 安定運用 | 4/5 |
| 経済のつながり | 4/5 |
| 拡張性 | 4/5 |
| 競争優位 | 4/5 |
| リスク管理 | 3/5 |
| 成長の芽 | 3/5 |
| 総合 | 3.9/5 |
総合は3.9/5。実績と規模の安定感がある一方で、「規制にどこまで寄せるか」「分散性をどう守るか」が将来評価を分けるポイントになりそうです。
リスク最小セット:主要3〜5点を押さえる
Skyで押さえるべきリスクは、RWA中心のポートフォリオ、USDSの凍結機能と中央的判断、利回り競争の3点に整理できます。
規制とRWA集中リスク
Skyは収益源の多くをRWA(現実世界資産)に依存するため、米国など関連法域の規制変更や運用主体の信用リスクに左右されやすい構造です。
RWA比率が高いほど、伝統金融側のショックがプロトコルへ波及しやすくなります。格付けの取得は透明性の向上につながるものの、投資適格より下の評価である点は冷静な見極めが必要です。
凍結機能と分散性・検閲耐性
USDSには将来的にアドレスや資金を凍結できる設計が含まれると報じられています。規制対応や不正対策には有効ですが、分散性や検閲耐性の観点では懸念材料になります。
チームは「乱用の意図はない」と説明していますが、コード上の可能性が残ること自体が不安の種です。将来的に、凍結機能を持たないPureDai系統との役割分担を図る構想も語られており、その実現が注目されます。
競争環境とイールド競争
利回り系ステーブルは競合が増えており、RWAを使うOndoや、デルタニュートラル戦略を用いるEthenaなどが高い利回りで急成長しています。利回りで劣れば、資金が流れやすい環境です。
Skyは規模と実績で優位に立つ一方、利回りを追いすぎればリスクが増し、保守的に寄りすぎればシェアを奪われる難しい立場にあります。長期的には「どの利回りとリスクの組み合わせで勝負するか」の選択が競争力を左右します。
Q&A
Q. Sky(SKY)の将来性を見るうえで、一番大事なポイントは?
USDSとSSRの残高がどこまで伸び、RWA収益が安定して続くかが中心です。そのうえで、収益がどの程度SKYホルダーへ還元される設計になるかが、中長期の評価に直結します。
Q. トークン価格だけ見ても意味がある?
価格だけでは全体像はつかめません。USDS供給量、SSRのTVL、RWA規模や構成、プロトコル収益の推移などを併せて見ると、価格の背景にある「経済の大きさ」が把握しやすくなります。
Q. 短期と長期でどう見方を変えるべき?
短期では利回り水準やマクロ金利、RWA関連ニュースが価格に影響しやすいです。長期では、RWA市場の成長ペース、規制との距離感、分散性とコンプライアンスのバランス、そしてUSDSがどれだけ「利回り付きドル」として定着するかを見ていく必要があります。
付録
SkyやUSDS、RWAの詳細を調べたい場合は、以下の公式ドキュメントやリサーチを参照すると理解が深まります。
- Sky.money — Top — Sky.money
- OKX Learn — What is Sky (SKY)? MakerDAO’s Rebrand Explained — What is Sky (SKY)?
- Nansen — Guides — What is Sky.money?
- CoinMarketCap Alexandria — Deep Dive — What Is Sky (SKY)?
- Messari — Protocol / Asset Profile — Sky Dollars (USDS)
- CoinPost — コラム — ステーブルコイン「USDS」とSky Protocol解説記事
- The Defiant — News — Sky Surges 14% as Sky Savings TVL Passes $4B
- DL Newsほか — Reports on USDS Freeze & Governance — MakerDAO’s USDS freeze function sparks debate
- Shift / Medium — How yield grows and risk along with it — How yield grows and risk along with it
- Aave — Official Site — Aave Protocol
- Shift / Medium — RWA-backed Stablecoins Section — RWA-Backed Stablecoins overview





