ハイエナ戦略の核は「暴落を待ち、誤価格だけを拾いにいくこと」です。
中編では、実際に暴落が訪れたときにどう指値を仕込み、刺さった瞬間に何を確認し、“静かな保有”へどう移行するかを整理します。
市場が壊れる瞬間をどう見抜くか
ハイエナ戦略が成立するのは、市場が一定の秩序を保ちながら推移しているときではありません。価格が崩れ、過剰な恐怖が流れ込み、市場全体が“正常な評価機能”を一時的に失う時──その瞬間にだけ誤価格は生まれます。
重要なのは、暴落そのものではなく、「いつから市場が壊れ始めたのか」を見抜けるかどうかです。下落が単なる調整なのか、それとも市場の評価軸がゆがみ、合理性が吹き飛んだ状態なのか。この境界を見誤ると、誤価格ではなく地雷に触れてしまいます。
中編ではまず、ハイエナ戦略における核心の一つ──“市場の壊れ目”をどう判断するかを、構造と視点の両面から整理していきます。
どこからが“誤価格ゾーン”なのか
暴落が起きたからといって、そこが誤価格とは限りません。ハイエナ戦略が狙うのは、単なる下落ではなく、合理的な評価軸が機能しなくなった領域──いわば市場の“壊れ目”です。この境界を正確に捉えられるかどうかで、戦略の成否が大きく分かれます。
正常な下落と“壊れた下落”の違い
正常な下落は、売り圧力と買い支えが依然として機能しており、節目ごとに反応が見られます。一方で壊れた下落は、節目が次々と無効化され、市場参加者の心理が一方向に傾き、価格が“評価ではなく恐怖”によって動き始める状態です。
境界線を判断するための3つの視点
1. 市場全体の恐怖の伝播
BTCとETHが節目を割った直後、アルトが一斉に過剰反応する局面がもっとも壊れやすいタイミングです。特定銘柄の問題ではなく、市場リスクが発動しているため、構造的に誤価格が発生しやすくなります。
2. 技術的な“節目”の崩落
週足レベルのサポートや過去最安値を割り込んだ瞬間は、投資家の合理性が途切れ、恐怖主導の売りが支配しやすくなります。この「節目ごとの抵抗の消失」は壊れ目の代表的なサインです。
3. 下落速度の異常加速
数十分〜数時間レベルでの垂直落下は、売られすぎではなく“評価の停止”を意味します。この速度の急変こそ、誤価格がもっとも発生しやすい条件のひとつです。
これらが同時に重なった場所こそ、ハイエナ戦略が狙う“誤価格ゾーン”の入口です。ただし、ゾーンに入ったからといって即エントリーではなく、次に必要なのは「どこまで落ちたら触れてよいのか」という距離の理解です。
誤価格に触れてよい“距離”の見極め方
市場の壊れ目を確認したとしても、その瞬間に飛び込むべきとは限りません。ハイエナ戦略で最も重要なのは「どこまで落ちたら誤価格として扱えるか」という距離感の判定です。この距離を誤ると、底値ではなく“割れた直後”の危険な価格帯に触れてしまい、地雷を踏むリスクが急激に高まります。
前回底からの“距離”が最も信頼できる基準
誤価格として扱いやすいのは、単なる下落ではなく、長期足で見たときに「前回の底」から明確に距離が取れている状態です。前回底を割った瞬間は地雷帯ですが、そこからさらに−20〜30%の深掘れが発生すると、過剰反応としての誤価格が発生しやすくなります。
ただし、戦略の“型”としては完璧でも、実際の投資家心理は「底値の底を取りに行きたくなる」という誘惑に強く引っ張られます。ここにハイエナ戦略の難しさがあります。
時間足は“週足が主”、日足は補助
誤価格を扱うときに、短期足(5分、15分、1時間足)を見ると、垂直落下や下髭に強く引っ張られやすくなります。しかしハイエナ戦略はあくまで構造を扱う戦略のため、指標としてもっとも信頼できるのは週足、次に日足です。
週足レベルで明確に節目を割り、さらに加速が入っている状態は、単なる調整ではなく“壊れた下落”のサインとして信頼性が高くなります。
最安値を割った後の“静かな観察”
最安値を割る瞬間は、市場参加者の恐怖がピークに達する局面であり、最も危険です。一方で、割った後に市場がさらに混乱して売られすぎた領域こそ、誤価格が発生しやすい。ハイエナ戦略ではこの「割った直後ではなく、割った後の静かな領域」を慎重に観察します。
これらの基準を組み合わせることで、“どこまで落ちたら触れてよいのか”という距離感が明確になります。次の章では、この判断を歪める最大の敵──底値の中の底値を取りに行きたくなる誘惑──をどのように制御するのかを扱います。
底値の中の底値を“取りに行きたくなる”誘惑と、その制御方法
誤価格を扱う難しさの核心は、単なる技術的な判断ではなく、投資家心理そのものにあります。市場が壊れ、節目を割り、価格が急落した瞬間──理性よりも先に胸が反応し、「ここが底かもしれない」という誘惑が強く立ち上がる。この衝動こそが、誤価格に触れる際の最大のリスクとなります。
割れた瞬間に“行きたくなる”心理の正体
節目を割った瞬間は、値動きがもっとも激しく、下髭や急反発のような“底のサイン”が短期足で生まれやすい局面です。しかしこの瞬間の反応は市場全体が混乱しているため、合理的な判断よりも恐怖と期待が錯綜し、もっともノイズが多い領域です。
この局面で飛び込むと、結果的に“割れた直後の危険地帯”を拾うことになり、誤価格ではなく地雷に触れる確率が大きく上昇します。
“一度は見送る”という制御スイッチ
節目を割った瞬間にエントリーしたくなる衝動に対抗するために、ハイエナ戦略では「一度は必ず見送る」という制御スイッチを設けます。割れた瞬間ではなく、その後の価格推移──すなわち『割れた後の静かな領域』を観察対象とすることで、誤価格の発生をより正確に捉えられます。
見送るべき理由は明確です。割れた直後は、壊れた下落の“加速フェーズ”であるため、ここで飛び込むのは構造的に危険だからです。
距離が整った領域にだけ触れる
誘惑を制御するもう一つの方法は、「触れてよいのは距離が整った場所だけ」と明確にルール化することです。前章で扱ったように、前回底からの大きな乖離(目安として−20〜30%)が生まれた領域や、市場全体の恐怖が行きすぎた場所にだけエントリーを許可する。
こうすることで「底値の底を取りたい」という衝動に左右されるのではなく、構造的な基準に基づいて誤価格に触れることができます。
この制御が機能することで、ハイエナ戦略は感情ではなく構造に従う戦略へと磨かれます。次の章では、そもそも誤価格と混同されやすい“地雷”をどのように避けるのかという最後の重要な視点を整理します。
誤価格か地雷か──判定を誤らないための視点
暴落局面では、多くの下落が一見すると誤価格に見えます。しかし、ハイエナ戦略が扱うのは「市場全体の混乱によって生まれた誤価格」であり、個別銘柄の問題が引き起こす正当な下落は対象外です。この区別を見誤ることが、もっとも大きな損失につながります。
個別の悪材料による下落は“地雷”である
運営チームの崩壊、重大な不祥事、資金流出、上場廃止、供給構造の破綻──こうした固有要因による急落は、どれだけ価格が下がっても誤価格とは言えません。構造そのものが傷ついており、正常化へ戻る力が乏しいため、ハイエナ戦略では明確に排除する必要があります。
過去には、マルチチェーンの運営停止や開発陣の逮捕など、価格よりも“基盤”が崩れたケースが複数存在しました。このような事例は、市場要因ではなく固有リスクであるため、誤価格として扱うべきではありません。
市場全体が落ちているか──最初に確認すべき一次判定
ハイエナ戦略の前提は、市場全体の混乱です。BTCやETHが節目を割り、システマティック・リスクが発動している局面では、恐怖が市場全体に波及し、構造的な誤価格が生まれやすくなります。
一方で、市場が落ちていないのに特定の銘柄だけ急落している場合は、固有要因による下落である可能性が高い。市場由来の混乱ではないため、ハイエナ戦略の対象にはなりません。
テーマの寿命が残っているか──誤価格の“前提条件”
誤価格として扱えるのは、銘柄の本質が依然として機能している場合に限られます。実需が弱く、ミーム的な要素が中心となっている銘柄は、そもそも正常化へ戻る力が小さく、誤価格とは言えません。
AI、DePIN、L2、インフラなど、長期的な需要がすでに存在するテーマは、混乱が収まったあとに価格が戻りやすい構造を持っています。逆に、テーマそのものが崩壊している領域では、いかなる下落も誤価格とは言えず、単なる下降トレンドです。
市場由来の混乱か、個別要因か。本質が生きているか、死んでいるか。これらの視点が重なることで、“触れてよい誤価格”と“決して触れてはならない地雷”を明確に区別できます。次章では、中編の内容を簡潔にまとめ、後編の実戦パートへつなげます。
誤価格へ触れるための“準備”はここで完成する
中編では、ハイエナ戦略の中心にある「誤価格の構造」を整理しました。どこから市場が壊れ始めるのか、どこまで落ちたら触れてよいのか、そしてどの領域は決して踏み込んではいけないのか──これらはすべて、誤価格に触れる前提条件として欠かせない視点です。
誤価格は、単なる下落ではありません。前編で示したように、市場全体の評価軸が崩れ、合理性が一時的に消える“壊れ目”でだけ生じる現象です。中編では、その壊れ目の境界線、距離、心理的な誘惑、そして避けるべき地雷を明確にし、誤価格に触れるための土台を整えました。
後編では、ここまでの視点を実際の行動に変換し、ハイエナ戦略がどのように利益へつながるのかを整理します。レイヤー設計、指値の配置、刺さった後の立ち振る舞い、収穫のタイミング──戦略が具体的な“型”として完成するのはここからです。
誤価格に触れた瞬間に勝負はほぼ決しています。 では、そのあとの「静かな保有」から「出口」までをどのように判断し、正常化のどこで刈り取るのか──。
続きは後編で詳しく整理します。





