DePINは、爆益を狙うためのテーマではありません。
それでもなお、多くの投資家がこの領域を無視できなくなっているのには、はっきりした理由があります。
通信、GPU、ストレージ。私たちが毎日使っているインフラは、流行や相場とは無関係に動き続けています。DePINは、その「止まらない需要」を、分散型という形で扱おうとする試みです。
そしてこの領域は、短期の話題とは無関係に、ポートフォリオの中で“役割を持ち始めている”テーマでもあります。
ただし、ここで一つだけ見落とされやすいポイントがあります。実需があるからといって、それがそのままトークン価格に反映されるとは限りません。
だからDePINは、「今すぐ何倍になるか?」ではなく、「資産として成立するか?」という視点で見なければいけません。
この記事では、DePINがなぜ“手堅いテーマ”と言われるのか、通信・GPU・ストレージの実需はどこでどう発生しているのか、そして実需がトークン価格に乗るDePINと、乗らないDePINの違いを、投資判断に必要な順番で整理します。
読み終えたとき、DePINをポートフォリオに入れるべきかどうか。そして入れるなら、なぜそう判断できるのか。その答えが、手元に残るはずです。
DePINは「儲かるテーマ」ではなく、資産として成立するテーマなのか
結論から言えば、DePINは条件付きで「資産として成立するテーマ」です。
DePINは「価格の物語」ではなく「需要の構造」で評価される
短期で何倍にもなる爆益テーマではありませんし、流行に乗って一気に注目を集めるタイプでもありません。それでもなお、DePINが投資テーマとして無視できない理由は、価格の物語ではなく、需要の構造そのものが評価の土台になっているからです。
多くの暗号資産テーマは、「注目されているか」「話題になっているか」「新しい物語があるか」で価格が動きます。このタイプのテーマは、上昇の勢いが強い一方で、関心が薄れた瞬間に評価が崩れやすいという弱点を持っています。
インフラ需要は、流行が終わっても消えにくい
一方でDePINは、通信、計算、保存といった社会インフラに近い領域を扱います。これらは、人々の生活や技術の進化と強く結びついており、流行や相場環境とは無関係に使われ続ける性質を持っています。
重要なのは、DePINが「何か新しいことをやっている」から評価されるのではなく、すでに存在する需要を、分散型という形で担おうとしている点です。需要をゼロから作るテーマではなく、既存の需要をどう取り込むかが本質になります。
この構造は、価格の動き方にも影響します。DePINは普段から派手に上がりにくく、相場の中心に立つことも多くありません。しかしその代わり、関心が落ちたからといって需要そのものが消えるわけではないため、評価が一気に崩れにくいという特徴があります。
「手堅い」=「何でも安全」ではない
ここで言う「手堅さ」とは、値動きが小さいという意味ではありません。前提となる需要が消えにくく、資産としての土台が崩れにくいという構造的な意味です。
ただし、DePINであれば何でも資産として成立するわけではありません。需要があっても、その価値がトークンに伝わらない設計であれば、価格は伸びません。
だからこそDePINは、「テーマとして強いかどうか」ではなく、どのような構造で需要が価値に変換されるのかを見極めた上で扱う必要があります。
次の章では、DePINで語られる「実需」とは具体的にどのようなものなのか。通信、GPU、ストレージという3つの領域を通して、その中身を整理していきます。
DePINの「実需」とは何か──通信・GPU・ストレージの現実
DePINで語られる「実需」とは、抽象的な期待や将来像の話ではありません。すでに現実世界で発生している需要を、分散型ネットワークとして扱うことを指します。
重要なのは、その需要が一時的なブームによって生まれているのではなく、日常や技術の進化に紐づいて継続的に発生している点です。ここでは、DePINの実需を支える代表的な3つの領域を整理します。
通信:日常生活の裏側で“止まらず発生し続ける”需要
通信は、DePINの中でも最も直感的に理解しやすい実需です。私たちはスマートフォンを使い、メッセージを送り、地図を見て、データを同期します。これらの行為が行われる限り、通信需要は毎日発生します。
この需要の特徴は、景気や流行に左右されにくいことです。人々が生活する限り、通信は止まりません。むしろ、IoTや都市インフラの進展によって、目に見えない通信需要は増え続けています。
DePINにおける通信は、大手キャリアと競合するというより、既存インフラが拾いきれない細かな需要を補完する役割を担います。都市の隙間、屋内、ローカルな用途など、中央集権型では効率が悪い領域に需要が集中します。
この「小さいが数が多い需要」が積み重なる構造こそが、通信系DePINの実需の本質です。
GPU:AI時代に“需要が減りにくい”計算資源
AIの発展は、計算資源に対する需要を根本から変えました。モデルの学習、推論、生成処理など、高度なAIはすべてGPUの計算能力に依存しています。
この需要は、一時的なブームによって生まれたものではありません。技術が高度化するほど、必要な計算量は増え続けます。つまり、AIが使われる限り、GPU需要は構造的に減らないということです。
一方で、中央集権型のクラウド環境だけでは、需要の急増に柔軟に対応しきれない場面も増えています。ここに、分散型GPUネットワークが入り込む余地が生まれます。
DePINのGPU領域は、「新しい用途を作る」よりも、すでに存在する計算需要を、より柔軟な形で提供するという現実的な役割を担っています。
ストレージ:データが増え続ける限り“不要になることがない”領域
写真、動画、ログ、AIモデル。データ量は年々増え続けており、減る兆しはありません。データが存在する限り、それを保存するストレージ需要は必ず発生します。
ストレージの実需が強い理由は、その役割が「保存」にある点です。保存されたデータは、一度置かれたあとも長期間残り続けます。新しい利用が生まれるたびに、過去のデータも含めて需要が積み上がる構造を持っています。
DePINにおけるストレージは、単なる容量の提供ではありません。分散による冗長性や永続性といった、中央集権型ではコストやリスクが大きくなりやすい部分を補完します。
地味に見えやすい領域ですが、データが増え続ける世界において、ストレージは最も息の長い実需を持つインフラの一つです。
ここまで見てきたように、DePINの実需は「将来そうなるかもしれない話」ではありません。通信、GPU、ストレージのいずれも、すでに発生している需要をどう扱うかという現実的なテーマです。
では、その実需はどのようにしてトークンの価値に反映されるのでしょうか。使われているのに評価されないDePINと、価値が積み上がるDePINの違いは、次の章で整理します。
実需があっても、DePINの価格が伸びないことがある理由
ここまでで、DePINには確かに実需があることを確認してきました。通信、GPU、ストレージはいずれも、すでに現実世界で使われ続けているインフラです。
ただし投資の視点で見ると、使われていることと、トークン価格が上がることは直結しません。DePINが分かりにくいと言われる理由は、まさにここにあります。
「需要がある」だけでは、価格は動かない
需要が存在していても、その利用によってお金の流れが生まれていない場合、トークン価格はほとんど動きません。
たとえば、利用者が実質的に支払いをしていなかったり、初期インセンティブによって使われているだけの場合、ネットワークは動いていても、価格に返ってくる要素がありません。
この状態では、「使われてはいるが、評価されない」というズレが生まれます。DePINで期待と現実が食い違いやすいのは、この構造のせいです。
“手堅いのに伸びない”DePINが生まれる構造
DePINは手堅いテーマだと言われますが、すべてが投資向きというわけではありません。特に注意したいのが、報酬が新規発行トークンに強く依存している構造です。
この場合、利用が増えても同時に供給も増えるため、需要の伸びが価格に残りにくくなります。
ネットワークは成長しているのに、トークン価格だけを見ると伸び悩む。DePINでよく見られるこの現象は、決して不思議なことではありません。
だからDePINでは、「実需があるか」だけで判断してはいけません。その実需が、価格にどう返ってくるのかまでを見る必要があります。
価格に反映されるDePINが満たしているポイント
一方で、実需がトークン価格に反映されやすいDePINには、共通する特徴があります。まず重要なのは、誰がその利用に対してお金を払っているのかがはっきりしていることです。
企業や開発者など、ネットワークの外から資金が入ってくる構造があると、利用は単なる活動ではなく、経済的な価値を持つ行為になります。
さらに、その支払いがトークンにどう影響するのかも重要です。手数料として消費されるのか、供給を減らす仕組みがあるのか。需要が増えたときに、価格にどう残るのかを見る必要があります。
「需要が伸びれば自然に価格も上がる」と考えてしまうと、ここで判断を誤ります。価格に反映される道筋が設計されているかがすべてです。
この視点を持てば、DePINは単なる地味なテーマではなくなります。構造を理解した投資家にとって、扱いやすいカテゴリに変わります。
次の章では、この前提を踏まえたうえで、DePINをポートフォリオの中でどのような役割として組み込むべきかを整理します。
DePINはポートフォリオの中で、どんな役割を持たせるべきか
ここまでを踏まえると、DePINは「当たれば大きい銘柄」を探すためのテーマではありません。ポートフォリオ全体の性格を整えるためのテーマだと言えます。
価格が一気に跳ねる場面は多くありませんが、実需が消えにくく、構造が壊れにくい。その特徴は、ポートフォリオの中で特定の役割を持たせることで、初めて意味を持ちます。
DePINは「爆益枠」ではなく、土台を作るテーマ
DePINに対して期待を外しやすい理由の一つが、「これで何倍になるのか?」という見方をしてしまうことです。DePINは、短期間で結果を出す枠ではありません。
その代わり、値動きが荒れにくく、判断を誤りにくいという特徴があります。ポートフォリオ全体が極端な賭けにならないよう、重心を下げる役割を担います。
爆益を狙うテーマと組み合わせることで、全体のバランスが取れる。DePINは単体で輝くというより、他のテーマを活かすための下支えとして機能します。
リスク許容度によって、DePINの置き場所は変わる
DePINをどれくらい組み込むべきかは、人によって違います。ここに唯一の正解はありません。重要なのは、自分がどれくらいのブレに耐えられるかです。
短期の値動きで大きなリターンを狙う人にとって、DePINは主役ではありません。一方で、資産全体の安定感を重視する人にとっては、無視しづらい存在になります。
割合そのものよりも、「このテーマにはどんな役割を持たせているのか」を意識することが大切です。DePINは、入れすぎると物足りなくなり、少なすぎると存在感がなくなります。
DePINは「いつ買うか」で印象が大きく変わる
DePINは、勢いで買っても満足しにくいテーマです。価格が上がりきったあとに飛びつくと、「思ったより伸びない」という感想になりやすくなります。
一方で、相場全体が冷え込んだ局面では評価が変わります。実需が残っている分、下がったところでは拾いやすく、戻りも期待しやすいという性質があります。
DePINに限っては、「今話題かどうか」よりも、「どれだけ冷え込んでいるか」を見る方が、結果につながりやすくなります。
短期で回すより、時間を味方につけるテーマ
DePINは、短期間で何度も売買するテーマではありません。日々の値動きよりも、使われ続けているかどうかの方が重要です。
価格が横ばいの時間が続くこともありますが、それ自体が失敗を意味するわけではありません。実需が積み上がるテーマは、評価が後から追いつくことが多いからです。
DePINは、急いで結果を出すより、時間をかけて育てる意識の方が相性が良いカテゴリです。
DePINは「静かに効いてくる」タイプの投資テーマ
DePINは、持っていることを忘れるくらいがちょうどいいテーマです。派手な上昇は少なくても、相場が荒れたときに、その存在感に気づくことがあります。
爆益を狙うためではなく、ポートフォリオ全体を安定させるために組み込む。その位置づけを理解できれば、DePINは非常に扱いやすい投資テーマになります。
何をどれくらい持つかは人それぞれですが、DePINは「入れるかどうか」よりも、どう位置づけるかを考える価値のあるテーマです。