このページは、暴落局面で「何を根拠に、どの順で、どう動くか」を固定するための実務メモです。
読み物としての面白さよりも、相場が崩れたときに見返して迷いを減らすことを優先しています。
ここで扱うのは「どう考えるか」ではなく、どう設計するかです。
この手順の前提となる「考え方の骨格」は、先に戦略編で整理しています。
下落率レンジ、指値レイヤー、資金配分、撤退ライン、エントリー後の運用までを、ひとつの手順に統合して整理します。
この手順を使っていい場面/使ってはいけない場面
このページの数値・手順は、すべて特定の前提に立っています。前提が違えば、同じ数値でも意味が変わります。そのため、最初に「想定する相場環境」と「対象外」を固定します。
前提の確認が必要なら、戦略編(成立する暴落/成立しない暴落)に戻ってから読み進めます。
想定している相場環境
想定しているのは、短期的な調整ではなく、恐怖が市場全体に広がる下落局面です。価格下落と同時に、出来高の変化や流動性の低下が見られ、売りが売りを呼ぶ状態を前提にします。
また、特定の銘柄だけが売られている状況ではなく、ビットコインを中心に市場全体が同時に崩れている局面を想定します。個別要因による下落は、この設計の対象外です。
対象としないケース
以下は、数値がどれだけ魅力的に見えても、この設計を当てはめるべきではありません。プロジェクトの前提が崩れている銘柄、恒常的に流動性が乏しい銘柄、明確な上場廃止リスクを抱えるケースです。
これらは「誤価格」ではなく「評価の見直し」が進んでいる可能性が高く、反発を前提にした設計が壊れやすくなります。
前提が違うと感じた場合は、この先の数値を見る前に一度立ち止まります。
判断ルール(感覚で動かないための固定ルール)
暴落を待つ戦略に立つと「どこまで下がれば動くべきか」という問いが必ず出ます。
ここで感覚に委ねると、判断は構造的に前倒しになり、十分に条件が整う前に動いてしまいます。
重要なのは「冷静になろう」とすることではなく、感覚で動かなくて済む前提を、事前に用意しておくことです。
このページでは、そのためのルールを次のように固定します。
下落率は「動く合図」ではなく「見る合図」
下落率は結論を出すための答えではありません。状況を注意深く観察すべき段階に入ったことを知らせる合図として使います。
下落率を見た瞬間に「入る/入らない」を決めると、数値を使っているようで、実際には判断を前倒ししているだけになります。
下落率の目的は、まだ動かないための材料を揃え始めることにあります。
数値は、時間軸と市場文脈とセットで扱う
同じ下落率でも、短期の急落と、時間を伴う下落では意味が変わります。
短期の急落は流動性低下や連鎖的な売りで、価格が実態以上に売り込まれることがあります。
一方、時間をかけた下落は、期待が段階的に剥がれているだけのケースもあり、誤価格が生まれているとは限りません。
下落率・時間軸・市場全体の文脈。どれか一つだけを切り取って結論を出さないことが、暴落戦略を壊さない前提になります。
暴落を数値で捉えるためのレンジ設計
「何%下がったら暴落か」を一点で定義すると、判断は不安定になります。同じ下落率でも、下げ方・時間軸・市場の状態で意味が変わるからです。
ここでは、暴落を一点ではなく、段階ごとのレンジ(ゾーン)として整理します。
暴落候補として見る下落率レンジ
以下は設計上の目安です。実際の判断では、必ず時間軸と市場全体の文脈を合わせて確認します。
| 軽度の下落(警戒ゾーン) | ピークから20〜30%程度。調整の範囲に収まることも多く、ここでは断定しない。行動は「監視を強める」。 |
| 中度の下落(検討ゾーン) | ピークから30〜45%程度。恐怖が出始め、雰囲気が悪化する。分割前提でエントリーを検討し始める。 |
| 重度の下落(歪みが強いゾーン) | ピークから45〜65%以上。強制清算や流動性枯渇が絡みやすく、価格が理屈より事情で動く。誤価格が生まれやすい。 |
70%を超えるような下落は、単なる暴落ではなく、前提そのものが崩れている可能性もあります。
この点は後述の「この設計を捨てる判断ライン」で必ず確認します。
ビットコインとアルトコインで見る基準の違い
暴落判断は、個別アルトの下落率だけで行いません。必ずビットコインの位置を基準にします。
設計上の目安として、ビットコインが30%下落した局面では、アルトが50〜70%下がっていても不自然ではありません。
ビットコインが40%以上下落する局面では、アルトは数値的な整合性を失い始めます。
「このアルトが何%下がったか」ではなく、市場全体がどこまで下がっているかを先に確認することが、設計を崩さない前提になります。
指値を一点にしないためのレイヤー設計
暴落局面は振れ幅が大きく、「ここが底だ」と一点で決め打ちすると設計が崩れます。
レイヤー設計は、底を当てに行くのではなく、誤価格が生まれやすい帯に、複数の指値をあらかじめ並べておく考え方です。
一点指値が機能しにくい理由
暴落局面では、1日で5〜10%の上下や、反発に見えた直後の再下落が起きます。
一点指値は「少し届かない」「刺さった直後にさらに下がる」といった形で、心理的にも設計的にも不安定になりやすくなります。
レイヤー数の考え方(設計例)
3レイヤー構成
浅めの暴落を想定した最小構成。管理は楽だが、深い誤価格を取り逃す可能性がある。例:ピークから30%/40%/50%付近。
5レイヤー構成
典型的な暴落を想定した基本構成。分散と集中のバランスが取りやすい。例:30%/38%/45%/52%/60%。
7レイヤー以上に増やすと間隔が狭まり、管理が複雑になります。結果として一点指値に近づきやすいため、数を増やすこと自体が目的にならないよう注意します。
レイヤー間隔をどう決めるか
間隔は均等にする必要はありません。むしろ、深くなるほど広げた方が自然です。
- 浅いゾーン:5〜8%程度
- 中間:8〜12%程度
- 深いゾーン:12〜20%程度
確認すべきは、すべてのレイヤーが刺さっても前提が崩れていないか、特定の価格帯に過度に偏っていないかです。
ここで違和感が出る場合、その設計は攻めすぎている可能性があります。
感情を排除するための資金配分設計(割合)
レイヤーを設計したら、各価格帯にどれだけの資金を割り当てるかを決めます。
重要なのは、どのレイヤーが刺さっても行動がブレない配分になっているかどうかです。
金額ではなく割合で考えることで、資金規模が変わっても同じ設計を再利用できます。
総資金に対する最大投入率
暴落局面では、すべての指値が刺さる可能性を常に想定します。
最初に「ここまでしか使わない」という最大投入率を固定します。
設計例:総資金の60〜80%を最大投入枠、残り20〜40%は余力として残す。
余力は機会損失ではありません。想定外の深掘り、撤退後の再設計、相場環境の変化に備えるための安全装置です。
各レイヤーへの配分例(5レイヤー想定)
以下は最大投入率70%を想定した一例です。深いレイヤーほど重く、浅いレイヤーほど軽くします。
| レイヤー | 下落率レンジ(例) | 配分(例) |
|---|---|---|
| レイヤー1(浅) | −30%付近 | 5〜10% |
| レイヤー2 | −38%付近 | 10〜15% |
| レイヤー3 | −45%付近 | 15〜20% |
| レイヤー4 | −52%付近 | 20〜25% |
| レイヤー5(最深) | −60%付近 | 25〜30% |
合計が最大投入率(例では70%前後)になるように調整します。
浅い段階で反発した場合も最低限は参加でき、深く入った場合には厚く拾える設計です。
配分設計を確認するポイント
最悪のケースを想定すると判断しやすくなります。
すべてのレイヤーが刺さっても冷静に相場を見られるか。さらに下がっても設計を破りたくならないか。
この問いに自信を持てない場合、配分は攻めすぎています。
暴落戦略では「もう少し入れたい」と感じる余白が残るくらいが、設計としてちょうどいい状態です。
この設計を捨てる判断ライン
暴落戦略では「どこまで耐えるか」よりも「どこから先は違うと判断するか」を先に決めます。
撤退は失敗ではなく、設計された工程です。ここで扱うのは、短期の値動きに対する損切りではありません。
前提が崩れたと判断したときに、これ以上この設計を使わないためのラインです。
撤退を「失敗」ではなく工程として扱う前提は、戦略編でも整理しています。迷いが出た場合はいったん戻って、前提の確認を優先します。
数値的に前提が崩れたと判断するケース
最深レイヤーをピークから60%下落までとして設計していたにもかかわらず、70%を超えても反応が見られない場合、状況は一段階変わっています。
この段階では「さらに安くなった」ではなく「想定していた誤価格の範囲を外れた可能性がある」と考えます。
数値はあくまで目安ですが、あらかじめ決めた範囲を無視し始めた時点で、設計は崩れています。
この場合は、追加判断を重ねる前に、いったん設計を止めます。
価格以外で前提が崩れるケース
前提の崩れは価格だけでは起きません。以下が重なった場合、数値が想定内でも立ち止まります。
プロジェクトの根幹に関わる問題が表面化した場合、市場全体ではなく特定の銘柄だけが売られ続ける場合、流動性が恒常的に枯れてしまった場合。
これらは一時的な歪みではなく、評価の見直しが進んでいる可能性を示します。
撤退後の行動をあらかじめ決めておく
撤退を判断したあとは、すぐに次のエントリーを探しません。まず相場から距離を置き、設計を見直します。
重要なのは、撤退が感情的な反応にならないよう、あらかじめ「この条件なら一度引く」と決めておくことです。
撤退できる設計だからこそ、安心して暴落局面に向き合えます。
一番ブレるのは、エントリーした後である
エントリーが完了した瞬間から、投資は別の局面に入ります。
価格は単なる数字ではなく、自分の判断の結果として見えるようになるためです。
同じ値動きでも心理的負荷は一気に高まります。
とくに暴落局面では、この変化が顕著になります。
下落が続けば不安が膨らみ、少し戻れば期待が先行する。どちらも冷静な判断を難しくします。
恐怖は、エントリー後にやってくる
多くの人は下落そのものを恐れているように見えます。
しかし実際に強く反応しているのは、「自分が入った後に下がること」です。含み損は、価格以上に判断を揺らします。
この恐怖に引きずられると、本来想定していた行動が取れなくなります。
耐えるべき局面で手放し、逆に待つべきでない場面で期待を抱く。多くの失敗は、このズレから生まれます。
問題は値動きではなく、判断を残したこと
ここで起きている問題は、相場が予想外に動いたことではありません。
エントリー後の判断を、その場に残してしまったことです。何を見て、どの状態になったらどう動くのか。その整理が事前に終わっていない。
判断を残したままポジションを持つと、決定は必ず感情に委ねられます。結果として、戦略は静かに上書きされます。壊れているのは相場ではなく、設計です。
エントリー後にやるべきことは「考える」ではなく「確認する」です。
いま起きている動きが、事前に想定した枠の内側かどうかを確かめ、枠の外に出たときだけ、撤退や再設計の工程に移ります。
利確設計(撤退は前章のラインに従う)
エントリー後の行動で最も判断が難しくなるのは、どこで手放すかという点です。
利益が出ているときも、含み損を抱えているときも、感情は判断に強く入り込みます。
この影響を最小限に抑えるには、利確と撤退を「その場で決める行為」から外す必要があります。
判断は相場の中で行うものではなく、事前に終わらせておくものです。
「戻ったから売る」では、常に遅れる
価格が戻り始めてから利確を考えると、判断はほぼ確実に後手に回ります。
「もう少し上がるかもしれない」という期待が先に立ち、手放すべき局面を逃しやすくなります。
利確は、価格が動いた後に考える行為ではありません。
どの水準で、どの程度を手放すかを、価格が動く前に決めておく行為です。
この基準があることで、戻り局面でも淡々と行動できます。
判断を前倒しするほど、相場は静かになる
利確や撤退の基準を事前に決めることは、未来の自分に判断を委ねないための工夫です。
感情が最も強く揺れる局面ほど、その場の判断は信用できません。
どこまで許容するのか。どこからは許容しないのか。
その線引きを平常時に終わらせておくことで、相場は「判断の場」ではなく「確認の場」になります。
エントリー後の行動は、相場との戦いではありません。
自分の判断を、どれだけ事前に整えておけるか。その積み重ねが、結果の安定につながります。
この設計の使い方と更新ルール
ここまで示してきた数値や配分は、正解を示すものではありません。
あくまで、判断を感情から切り離すための設計例です。相場環境や銘柄、資金規模が変われば、数値は当然変わります。
重要なのは、数値そのものではなく、どのような考え方で設計されているかです。
このページは、相場が落ち着いているときに更新し、暴落時にはそれに従うための参照メモとして使います。
数値は調整してよいが、構造は変えない
下落率レンジ、レイヤー間隔、各レイヤーの配分割合は、自分の条件に合わせて調整して構いません。むしろ、何も変えずに使う方が危険です。
一方で、分割で入ること、余力を残すこと、撤退ラインを事前に決めることといった構造そのものは簡単に変えるべきではありません。
これらは暴落局面で判断を守るための骨格だからです。
設計は一度作って終わりではない
設計は、相場が落ち着いているときに作り、暴落時にはそれに従うものです。
ただし一度作った設計を永遠に使い続ける必要はありません。
相場環境が変わったと感じたとき、あるいは撤退を経験したあとには設計を見直します。
その際も感覚ではなく、どの前提が変わったのかを言葉にして整理し、数値を更新します。
このページは、数字を写し、線を引き、自分なりの設計に書き換えていくためのメモとして使うことを想定しています。
その過程自体が、戦略の一部です。
