L1(レイヤー1)とは|基盤チェーンの競争と投資戦略

ブロックチェーンの世界は「L1(レイヤー1)」から始まります。ビットコイン、イーサリアム、ソラナ──これらはすべて独自のコンセンサスとネットワークを持つ基盤チェーンです。DeFiやNFT、RWA、AIといったWeb3のアプリケーションは、最終的にL1のセキュリティと分散性に支えられています。

2025年現在、L1市場は再び熱を帯びています。EthereumがL2に負荷を移しながら依然として中心に君臨する一方、SolanaやAptos、Suiなど高性能チェーンがシェアを拡大。さらにCosmosやPolkadotのように「複数チェーンのネットワーク」を基盤とするモデルも進化を続けています。L1の勝敗はWeb3の地図そのものを塗り替える可能性があります。

L1とは何か ─ 定義と役割

定義

L1(レイヤー1)とは、独自のコンセンサスアルゴリズムを持ち、最終決済を担う基盤チェーンを指します。ビットコインは送金に特化した決済L1、Ethereumはスマートコントラクトを備えた汎用L1の代表例です。

役割

  • 最終決済:全ての取引が最終的に記録される土台
  • セキュリティ:分散型ネットワークによる改ざん耐性
  • アプリ基盤:DeFi・NFT・RWA・ゲームなどアプリを展開可能

仕組みと構造

主要コンセンサス方式

  • PoW(Proof of Work):ビットコインが採用。セキュリティは高いがスループットは低い。
  • PoS(Proof of Stake):Ethereum、Solanaなど多数のL1が採用。スケーラブルでエネルギー効率も高い。
  • DAGベース:AVAXやAleph Zeroが採用。非線形構造で並列処理に強み。

L1とL2の関係

EthereumのようにL1の上にL2(Optimistic RollupやZK Rollup)が乗ることで、スケーラビリティを確保するモデルも一般化しました。つまりL1は「最終的な安全性の保証人」としての役割を果たしています。

課題と投資リスク

スケーラビリティ問題

高トランザクション需要に応えられないL1は、手数料高騰や遅延を引き起こします。EthereumはL2シフトで対応していますが、単体では依然として処理能力に限界があります。

セキュリティと集中化リスク

PoSチェーンではステーク集中による中央集権化が課題です。特にSolanaやAptosはバリデータ数が限られており、障害や攻撃時のリスクが懸念されます。

規制リスク

L1はステーブルコインや証券型トークンの基盤となるため、各国の規制動向に影響を受けやすいです。米国SECの判断次第で「証券認定」されるリスクが存在します。

トークン価値の希薄化

新興L1が乱立した結果、流動性が分散し「勝者総取り」の構造が生まれやすくなっています。成長余地のないL1は早期に投資妙味を失うリスクがあります。

解決策と進化の方向性

スケーラビリティ拡張

シャーディング、並列処理、モジュラー型との連携が進み、L1の処理性能は年々向上しています。EthereumのDanksharding構想、Solanaの並列処理(Sealevel)などが代表例です。

L2・モジュラーとの統合

L1単独でのスケーリングには限界があるため、L2やモジュラー型DAとの連携が不可欠です。EthereumはL2中心戦略を取り、CosmosはIBCで相互接続を実現。L1は今や「単独チェーン」から「ネットワーク基盤」へ進化しています。

エコシステム戦略

単なる技術競争だけでなく、開発者支援やインセンティブ設計が重要になっています。Solanaの財団主導型エコシステム、AptosやSuiのベンチャー資金投入などが好例です。

規制対応と企業連携

RWAやCBDCなど実需系アプリが広がるにつれ、規制適合性がL1選定の基準になります。PolkadotやCosmosは政府・企業連携を進める事例も増えています。

主要プロジェクト比較(2025年)

総評(クイック一覧)

以下は代表的なL1の特徴を簡潔に整理したものです。

プロジェクト総評コメント
Bitcoin(BTC)最古参の決済L1。デジタルゴールド。
Ethereum(ETH)スマートコントラクトの標準。L2と共進化。
Solana(SOL)高速・低コスト。並列処理に強み。
Cosmos(ATOM)IBCによるマルチチェーン連携。
Polkadot(DOT)パラチェーン接続で柔軟性を確保。
Avalanche(AVAX)サブネット戦略で多用途対応。
Aptos / SuiMove言語を採用した高性能新興勢力。

評価軸1:コンセンサス方式

プロジェクト方式
BitcoinPoW
EthereumPoS(The Merge後)
SolanaPoS+PoH(Proof of History)
CosmosTendermint PoS
PolkadotNPoS(Nominated Proof of Stake)
AvalancheAvalanche Consensus
Aptos / SuiPoS+Moveベース

評価軸2:エコシステム規模

プロジェクト特徴
Bitcoin決済・RWA基盤。DeFi用途は限定的。
Ethereum最大級のDeFi・NFTエコシステム。
SolanaNFT・ゲームに強み。高い成長率。
Cosmos多数のアプリチェーンを接続。
Polkadot政府・企業提携を拡大中。
Avalanche企業・金融機関との実証実験が多い。
Aptos / Sui新興だが資本力で急拡大。

評価軸3:投資妙味

L1投資は「安定性と成長性のバランス」が鍵です。BitcoinやEthereumは低リスク枠、Solanaや新興L1は成長枠として位置づけられます。

L1銘柄に投資する際の着眼点

安定基盤 ─ Bitcoin・Ethereum

市場シェアと流動性で圧倒的な存在。長期ポートフォリオのコア資産として不可欠です。

成長株 ─ Solana・Avalanche

技術的優位性とエコシステム拡大により、短〜中期で高成長を狙える銘柄です。

戦略的分散 ─ Cosmos・Polkadot・Aptos・Sui

マルチチェーン接続やMove言語といった独自性を持つL1は、リスク分散と将来性の両立に有効です。

今後の展望(2025→)

L1市場は「多様化と棲み分け」が進みます。EthereumがL2と共存しながら主導権を維持する一方、Solanaや新興L1がニッチ市場で存在感を高める構図です。CosmosやPolkadotの相互運用モデルは、クロスチェーン時代の基盤として不可欠になるでしょう。

まとめ

L1はすべてのWeb3アプリケーションを支える基盤であり、投資対象として最重要領域です。安定型(BTC・ETH)を軸に、成長枠(SOL・AVAX)や戦略的分散枠(ATOM・DOT・Aptos・Sui)を組み合わせることで、変化の激しい市場に耐えられる長期ポートフォリオを構築できます。