レイヤー1(L1)とは:入門と全体像

ブロックチェーン経済の土台が「レイヤー1(L1)」です。アプリや資産の管理、取引の検証、スマートコントラクトの実行までを一手に担い、Ethereum・Solana・Avalancheなどのネットワークが代表例です。この記事では、仕組みと収益の筋道、主要プロジェクトと見どころをスマホ前提で整理します。(As of:2025-10-26(JST))

目次

なぜ今、レイヤー1が再び注目されているのか

Layer 1(基盤) Ethereum / Solana / Avalanche Layer 2(拡張層) Arbitrum / Optimism / zkSync など アプリ層(DApps) DeFi / GameFi / RWA など ブロックチェーンのレイヤー構造 (L1がすべてのアプリを支える土台)
図:レイヤー1〜アプリ層の関係。L1が最下層で全てのトランザクションを処理する。

“動かす力”を持つ層:レイヤー1の正体

レイヤー1(L1)は、ブロックチェーンのエンジンにあたる部分です。ここが取引を処理し、データを記録し、契約(スマートコントラクト)を自動で動かします。つまり、アプリや資産はすべてL1の上で初めて「動く」ことができます。

Ethereum・Solana・AvalancheといったL1が再び注目されているのは、この“動かす力”が現実の経済と結びつき始めたからです。単なる暗号資産の送金網ではなく、社会のデジタル基盤へと進化しつつあります。

利用が価値になる:シンプルな収益構造

レイヤー1では、ユーザーが取引を行うたびにガス代(手数料)が発生し、その一部がネットワーク維持者(バリデータ)に支払われます。この循環がL1の経済を支えています。

利用が増えるほど手数料も増え、ネットワークに利益が還元され、トークンの価値が上がる──この「使われるほど価値が積み上がる」構造こそがL1最大の魅力です。言い換えれば、ユーザーの行動そのものがエンジンを回す仕組みなのです。

新しい需要が流れ込む:AI・ゲーム・RWAの台頭

最近では、AIモデルの実行、ゲーム内のリアルタイム決済、そして不動産・国債などの実世界資産(RWA)管理までもがL1上で動くようになっています。かつて「仮想空間の仕組み」と見られていたブロックチェーンが、現実経済のデータや資産を扱う現実の基盤に変わりつつあるのです。

用途が多様化するほどL1の取引は分散し、安定した需要が生まれます。特定ジャンルに依存しないこの構造が、長期的な成長力の源になります。

L1が再び脚光を浴びる背景

2024年以降、AI・ゲーム・RWA・DeFiなど複数分野が同時に拡張期に入りました。これによりL1は「共通インフラ」として再評価され、投資資金が戻り始めています。かつての“速度競争”から、“現実接続”と“安定稼働”の時代へと移行しつつあるのです。

なぜレイヤー1はブロックチェーン経済に不可欠なのか

L1 分散ネットワークの構造 (中央がなく、どのノードも自律的に稼働する)
図:レイヤー1ネットワークの分散構造。中央管理者が存在せず、各ノードが相互に検証・維持を行う。

“取引を止めない仕組み”が、経済の信頼を支える

レイヤー1(L1)はブロックチェーンの経済インフラです。銀行で言えば清算システム、インターネットで言えばサーバー群にあたる層で、すべてのアプリやトークンの動作を裏で支えています。ここが動き続ける限り、誰でも24時間いつでも取引を行うことができます。

この「止まらない仕組み」が、世界中でL1が選ばれる最大の理由です。どの国でも、どんな時間でも動く。これこそが中央機関を介さずに成り立つ“新しい経済圏”の土台です。

仲介ゼロで信頼をつくる:透明性という標準

レイヤー1ではすべての取引履歴が公開台帳に記録され、誰でも確認できます。人を信用するのではなく、仕組みを信用する。この考え方が、ブロックチェーン経済の根幹にあります。

会計監査やサプライチェーン追跡など、従来は時間と人手を要した確認作業も、L1上では自動で検証可能です。透明性を“デフォルトの機能”として備えていることが、他の金融インフラとの決定的な違いです。

国境を越える市場:すべての人が同じ条件で参加できる

L1は誰でもアクセスできるオープンな市場です。口座開設も、送金承認も不要。スマートフォンとネット環境さえあれば、どの国の人でも同じ条件で資産を送受信できます。

この仕組みは、金融サービスに届きにくい地域の人々にとって新しい選択肢となり、“金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)”を現実にしています。ブロックチェーンが単なる技術から社会基盤へと成長している理由は、まさにこの“誰でも使える”構造にあります。

「信頼・透明・開放」──3つが揃って初めて経済が回る

L1が担うのは、技術ではなく信頼の設計です。取引が止まらない(信頼)、誰でも見える(透明)、誰でも使える(開放)──この三つの条件を満たすことで、はじめてブロックチェーン経済は成り立ちます。

そしてこの信頼の構造が、次に登場するDeFi・AI・RWAなどのアプリ層へと“波及”していく。L1はその全てを下支えする共通インフラなのです。

主要プロジェクトでつかむ全体像

Ethereum|“標準”を築いた王道の基盤

Ethereum(イーサリアム)は、最も歴史が長く、世界で最も多くの開発者と資本が集まるL1です。ブロックチェーン上で契約やアプリを動かす仕組みを初めて実用化し、現在のDeFiやNFT、RWAなどの土台をつくりました。

最大の特徴は「誰でも使える共通ルール」を整えた点です。L2(レイヤー2)と呼ばれる拡張層を通じて処理能力を高めながら、セキュリティと分散性のバランスを維持しています。言い換えれば、Ethereumはブロックチェーンの“標準語”です。

Solana|スピードで切り拓くリアルタイム経済

Solana(ソラナ)は、「速さ」と「安さ」で他のL1と一線を画します。ネットワーク設計を1層構造にすることで、秒間数万件の処理を実現し、ガス代(取引手数料)を極めて低く抑えています。

この性能は、リアルタイム性を求める分野――たとえばゲーム内決済やAIによる瞬間的取引――に強みを発揮します。Solanaは「個人が日常的に触れるブロックチェーン」を目指す、最も生活に近いL1です。

Avalanche|用途ごとに最適化できる柔軟な構造

Avalanche(アバランチ)は、1つのネットワークの中に複数のサブネットを持てる構造が特徴です。企業やアプリが自分専用のL1を構築できるため、用途や規制に合わせた運用が可能です。

たとえば金融機関が自社専用のサブネットを使えば、取引をオンチェーン化しながらもプライバシーや速度を保てます。Avalancheは「拡張性と現実適応力」でL1の中でも異彩を放つ存在です。

3つのL1でわかるブロックチェーンの進化段階

Ethereumが「共通の言語」をつくり、Solanaが「体験の速度」を追求し、Avalancheが「仕組みの多様化」を進めてきました。3つの方向性は競争であり、同時に進化の分業でもあります。

投資の観点で見れば、Ethereumは安定、Solanaは成長、Avalancheは応用――という三層構造。L1の未来は、この3つの柱の上に築かれつつあります。

どこを見る?L1の健全性を測る3指標

レイヤー1を測る3つの視点 (取引量・ステーキング・分散度) 取引量=体温 ステーキング=心拍 分散度=骨格 図:温度(取引量)、鼓動(ステーキング)、骨格(分散度)で健全性を可視化。
図:L1の健康診断イメージ。温度(取引量)、鼓動(ステーキング)、骨格(分散度)で健全性を可視化。

レイヤー1(L1)の価値は、価格だけでは測れません。 ネットワークが「どれだけ使われ、どれだけ安全で、どれだけ維持されているか」を数字で見ることが、投資でも開発でも共通の基礎になります。 ここでは、L1を理解するための3つの重要指標を整理します。

① 取引量と利用者数:実需の“温度計”

L1の生命線は「どれだけ取引が動いているか」です。 取引(トランザクション)数やアクティブユーザー数が増えているネットワークは、それだけ手数料収益も上がり、エコシステムの成長につながります。 この数字は、言い換えれば「実需の体温」。冷え込めば停滞、温まれば拡大の兆しです。

分野代表主要指標
基盤EthereumTx数・ユニークアドレス
高速処理SolanaTx成功率・秒間処理数
拡張構造Avalancheサブネット数・日次Tx

② ステーキングと利回り:信頼の“預け先”

L1の安全性を保つのは、ネットワークにトークンを預けて検証を行うステーキングです。 多くのユーザーが長期的にステークしているほど、ネットワークは安定し、攻撃コストも高くなります。 年利(APY)やステーク比率を比較すれば、そのL1がどれだけ信頼されているかが見えてきます。

分野代表主要指標
ステーキングEthereum預入額・報酬率
リキッドステーキングLidoシェア・利回り
ネットワーク安定性Solana稼働率・再起動回数

③ 分散度と安全性:信頼の“支柱”

分散度(ノード数やバリデータ数)は、L1の信頼性と耐久性を測る最重要指標です。 参加者が多く、地理的にも偏りが少ないほど、攻撃や停止に強いネットワークになります。 また、ソースコードの監査実績やバグ報奨制度の有無もチェックポイントです。

分野代表主要指標
バリデータEthereum稼働ノード数・集中率
セキュリティSolana監査件数・停止履歴
構造Avalancheサブネット分散・独立度

数字の裏にあるものを読む

これらの指標は、単なる統計ではなく経済の動きそのものです。 取引量は需要の強さ、ステーキングは信頼の厚さ、分散度は安全の深さ。 数字の“動き方”を追うことで、L1がどこへ向かっているのかが見えてきます。

失敗しないためのシナリオと注意点

レイヤー1市場の3つのシナリオ (上昇・安定・警戒) 上昇 安定 警戒 上昇:制度整備と参入増で持続的上昇 安定:利用増と配当型成長 警戒:過熱・集中化リスク
図:L1市場の3つのシナリオ。青=上昇(制度追い風)、緑=安定(利用積み上げ)、赤=警戒(過熱・集中)。

上昇シナリオ:規制と整備が追い風になる

今後のL1市場で最も現実的なのは、制度整備による安定成長です。各国が暗号資産の会計・税制・証券区分を明確にし始めたことで、機関投資家が本格参入しやすい環境が整いつつあります。

この流れは、L1にとって追い風です。法的に「扱いやすく」なれば、より多くの資産やアプリがオンチェーン化され、トランザクションが増加します。信頼が制度で裏打ちされる段階に入ったといえます。

安定シナリオ:堅実に“使われて稼ぐ”段階へ

一方で、短期的な爆発的上昇よりも、利用ベースの積み上げ型成長が主流になる可能性もあります。L2(拡張層)やサブネットなどの導入で取引コストが下がり、日常的な利用が増える構造です。

このフェーズでは、取引量や手数料収益が安定的に積み上がり、長期的にネットワーク価値が上昇します。株式市場で言えば、インフラ企業の配当成長に近い動きです。

警戒シナリオ:過熱と集中化のリスク

注目が集まるほど、リスクも大きくなります。特に、人気L1に資金が集中しすぎると、一時的なガス代高騰やネットワーク混雑を引き起こすことがあります。また、バリデータ(検証者)が少数に偏ると、分散性が損なわれ、“中央集権化の逆流”が起こるリスクもあります。

こうした兆候は、取引成功率や手数料の推移を追うことで早期に察知できます。数字の“異常な跳ね方”は、たいてい市場の過熱サインです。

実践ポイント:分散・監視・ルール化

リスクを抑える最も現実的な方法は、複数のL1に分散して長期監視することです。短期の値動きに左右されず、週1回の指標チェック(取引量・稼働率・手数料)を習慣にすれば、トレンド変化に早く気づけます。

  • 配分:安定型(ETHなど)×成長型(SOL・AVAXなど)
  • 監視:取引数・ガス代・ノード稼働率を定期確認
  • 上限:1銘柄あたり20%を目安に集中リスクを回避

最も大切なのは、「何を持つか」ではなく「どう付き合うか」。 L1は長期的に価値を積み上げる構造だからこそ、焦らず、数字を見ながら静かに積み上げていくことが成果につながります。

リスクと免責事項

主な技術リスク:仕組みは万能ではない

レイヤー1(L1)は日々進化していますが、完璧ではありません。スマートコントラクト(自動契約プログラム)やブリッジ(チェーン間の接続)に脆弱性が見つかることもあります。コードを変更できないという特性は信頼の源である一方で、不具合の修正に時間がかかるリスクも伴います。

信頼性を確認するには、監査済みプロジェクトであるか、実績のある開発チームが運営しているかを必ず確認しましょう。

価格変動と清算リスク:値動きの早さに注意

L1トークンは市場全体の影響を受けやすく、短期間で大きく値動きすることがあります。特に担保を使った取引やレンディングでは、相場下落時に自動清算(強制売却)が発生するリスクがあります。

リスクを減らすには、余裕のある担保比率を保ち、相場変動時には手動でポジションを調整するのが基本です。値動きを避けられなくても、備え方で結果は変わります。

運用上の注意:情報は常にアップデートを

ブロックチェーンは技術と規制の両面で変化が早い分野です。1年前の“常識”が、いまは通用しないこともあります。 常に公式ドキュメントや監査報告を確認し、SNSやコミュニティの噂だけで判断しないようにしましょう。

免責

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資を勧誘・推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。 本サイトは、掲載情報の正確性・完全性を保証するものではありません。(最終更新:2025-10-26(JST))

FAQ(よくある質問)

Q1. レイヤー1(L1)とは簡単に言うと何ですか?

A. ブロックチェーンの基盤ネットワークです。すべてのアプリや取引がこの層の上で動いています。インターネットで言えば「サーバーのような存在」です。

Q2. L1の収益はどこから生まれるのですか?

A. 主にユーザーが支払う手数料(ガス代)です。取引が増えるほど手数料が積み上がり、ネットワーク維持者に報酬が分配されます。

Q3. 投資を始めるにはどんな準備が必要ですか?

A. 少額から始めて、まずはウォレットの使い方を理解するのが第一歩です。その後、公式ドキュメントや信頼性の高い取引所を活用し、安全なステーキングから慣れていくと良いでしょう。

Q4. 税金はかかりますか?

A. 含み益・利確益には税金が発生する場合があります。税制は国や地域によって異なるため、最新情報を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

Q5. 今後どんな分野でL1が使われていくのですか?

A. 現在、AI・ゲーム・RWA(実世界資産)の分野で利用が広がっています。将来的には行政・医療・サプライチェーンなど、現実社会の基盤領域にも拡張が期待されています。

参考・出典(一次情報中心)

L1の世界は進化が速く、数カ月でトレンドが入れ替わります。ここで紹介するリンクは、すべて一次情報に基づいた“確かな入り口”です。投資や学習の際は、必ず一次ソースを確認しましょう。

情報の鮮度が価値を決めます。公式ソースと信頼できるデータサイトを併用しながら、数字と事実を自分の目で確かめていくことが、L1投資・分析の第一歩です。

  1. DeFiLlama データ — 各ネットワークのTVL推移。↩︎
  2. Ethereum Docs — 手数料・ガス設計の詳細。↩︎
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